【創作小説】一瞬の花火(3)
ドキドキがとまらない。
あの麗しい人の瞳の中に私は吸い込まれる。
あの人の透き通る瞳の奥には強い力を感じる。私の瞳に映ったあの人は艶やかで__。
なんとも形容しがたい雰囲気をまとう。
その姿を一寸も変化させることなくゆっくりと私に近づいてくる気配。
ゆっくりと、そして、滑らかな、そんな影が私にかかり__。
それに合わせ、私はつられるように表情を上げる。
『どうしたの?』
そう聞かれて__。
顔を上げた。
その人は立っていた。
まるで光の中の天使みたいだ。
美しい光が差す。
その人は、私を呼びに来た天使か女神様のように寛容な微笑みを口元に添えている。
私は、恥ずかしそうに下を向く。
それがその人との出会いだった。
__________
そうだった。忘れもしないあの日のこと。
その人は、私の前に立っていた。
微笑みは聖母マリアの神々しさ。
後光がさすかのような髪の潤いに天使の輪。
おむかえがきたのか
そう感じるかのようなそんな__。
私は目を見開く。
その人は、よくよく見る前に気がつく。
この人私とそっくり、鏡に映った私の顔。
『な、ん、で__。』
わたしと、そっくりな、私。
でも、違う人。
でも、一緒。
どこかで出会った
その感覚はホント。
そう、お母さんの、お腹の中で。
わたしとこの人は会っていたんだ。
そんな直感。
どこから湧いてくるのか。
直感は実感に変わる。
その人の瞳に映るわたしは惚けているように目が煌めきを持ち頬はぽーっと赤く上気して。
ああ、わたしは、この人と会うためにここにいるんだ。わたしは、ここにいるのは、この人に会うためだったんだ。
そう実感した。
知らないこの感情にフォーカスした瞬間に、わたしは悟る。
これは夢かまぼろしか。
きゅーっとめをつむりそうっと開く。
そこは変わりのない静かな光のさす教室。
目の前にはあの麗しいあの人。
顔が一緒なのに私とは違うこの人に、わたしは目を丸くしていた。
どうしたら
こんなに
美しい人になるのだろうか
混乱の中に私は身を投じ、数秒思案する。
もう考えたって仕方がない。
私は私。今は今。
だから今しか出来ないことをする。
私はそう決めた。だから動きだす。