【創作小説】一瞬の花火(1)
静かな光が降りそそぐ教室のなか。
一番奥から1・2・3・4・5番目の席に座っていて___。
周りのザワザワが聞こえた。
私の周りだけがずーっと静寂で___。
周りのザワザワが悪口を言っているような気がする。
『どうしたの?』
と、聞かれ__。
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ベットのなかで身動ぎをする。
微睡みから帰ってきた私はぱっちりと目を覚ました。あの頃のことを思い出す。
そう、中学校に入学したばかりのころ。
あれは、私が初めて経験したことだった。
闇の中で、もがいても、もがいても、私の周りだけはずーっと静寂。変わらない、いつも一緒な世界。
道のない道。
そこをひた走っている私はその時まだ12歳だった。歳若い私は、世間なんて知らない。
自分のことだけで精一杯。
なんでも頑張る。
一生懸命がんばる。
そう決めて入学した新たな場所。中学。
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今日は入学したその日。
小学校を卒業してからの初めての春。
わたしは、深呼吸をして新しい教室の扉に手をかけた。
「いや。まてわたし。忘れてた」
心の中で呟く。
「心を整えて。深呼吸を3回。
手のひらに3回人の字を描いて___」
人、人、人
その、手のひらを口に近づけて
ゴクリ。人の字を飲み込む。
そう。入学してから初めての教室へ踏み出す。
そこへ踏み出す一歩は、私の期待感を表すように弾んでいたが、緊張が私の足をとめた。
私は一度立ち止まってお母さんから教えてもらったいつもするおまじない。
「よし。」
からりと軽い音をたてて引き戸を右から左へ開ける。
入学してから初日の今日は、初めての教室。
自分の席へ向かう私は新たな気持ちを持っていた。
ドキドキ。
どんな子たちがいるのかな、どんな授業をするのかな、先生はどんな人なのかな。
期待と緊張と希望を胸に自分の席へ。
ここが私の生活が新たにはじまる場所。
周りを見渡す。
きらきらと光の降りそそぐ教室。
教室の窓にいる鳥がちちちと鳴き、飛び立った。
新たな門出を祝うかのような和やかな空気を感じる。
今日から始まる私の新たな一歩のなかの希望と期待。
でも、
たった1ヶ月で
わたしの踏み出した一歩は無惨にも掻き消され
どーん。きらきら。しゅわー。
一瞬の花火が咲いて暗くてどんよりと、厚く重たい夜空のなかへ消えていった。