book.10nchan...本のやしろのなかへ.

本や漫画小説を読んでいくブログです。伝統文化や興味のある分野の発信も随時行います!短編小説も書いていきます。よろしくお願いします。It is a blog that will read books and manga novels. We will also send out traditional culture and fields of interest to you at any time! Thank you.

【創作小説】琉星のほうき星2

※ここからは創作要素が強くなり、映画「すずめの戸締まり」のネタバレ(?)要素も入ってくるので注意してください

 

「なぜ?」

わたしは再び問いかける

わたしはなぜ生きているの?

 

常世の世界と現世を行き帰ったわたし

 

常世の世界は近くにある

でも遠いはずなのに

 

本当に見たのに嘘のように感じる

 

 

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もっともっと昔

3月11日のあの日

 

地震は起きた

 

大きな水がおし寄せ

すべての記憶を押し流した

 

「お母さん」

 

お母さん・・・

わたしは思わず足を留めた

 

お母さん・・・

 

「お母さんは?」

 

お母さん・・・

 

小さな頃の記憶

 

 

でも思い出せないのだ

お母さんとの大事な思いでが

 

あの日は寒かった

凍えるような寒さだった

 

わたしはどこへ向かっているのか

わからない

 

でも進まなければいけない

そんな衝動に駆られて

 

お母さん・・・

どこ・・・

 

わたしは探し回るけれど

誰一人としてお母さんを知る人はいない

 

お母さん・・・

涙で一寸先もぼやけ見えない

どうしてどうして

 

わたしは涙がとまらない

 

 

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記憶はまだ続く

 

凍てつく空気と

わたしの心の中

凍りついていく

 

その時

 

「…ちゃん…ちゃん」

「…ちゃん。」

わたしを呼ぶ声が聞こえる

からころと鳴る鈴の音によく似た

澄んだ声が

 

なぜか二つ

 

「だれ・・・」

 

わたしは振り向き

その先を見つめ

見つけた

 

その人たちを

 

「だれ・・・?」

再び空に問いかける

 

 

「私たちは、要石」

「るな」「きづき」

 

そういうと、彼女たちは

三日月の線を描く両の眼をふっと開き

 

「常にさく花 一輪採りたもうて 我らに与えよ」

 

そう唱えたかと思うと二つの

美しく透明な水晶石となり

祓い浄められた水の中へ落ちる

 

わたしは美しく煌めきながら落ちるそれを見つめる

 

わたしも口が動きだし

「常にさく花 花火 一輪咲きたもうた かのものたちにささげる」

そう呟くのが早いか否か

 

天上にあった星々がほうき星となり地上へと降り注ぎ

わたしの唱えたことばに応するように

一輪の花を形どっていく

 

目の前の二つの水晶石

滑らかな光をやどした常の花

永遠に消えることのない光

 

その光はまるでわたしに問うように光る

眩しくて目を細めるわたし

 

・・・…ちゃん…ちゃん。___

 

ふっと目を開くと

そこには

 

「お母さん・・・?」

 

お母さん!

 

なんとどんなに問うても

得られなかった解

 

得られた瞬間だった

 

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記憶の中の世界は儚く脆く美しい

どんなにもう一度見たいと願ったとしても

二度と手には入らない

 

新海監督はそんな世界に生きていると思う