book.10nchan...本のやしろのなかへ.

本や漫画小説を読んでいくブログです。伝統文化や興味のある分野の発信も随時行います!短編小説も書いていきます。よろしくお願いします。It is a blog that will read books and manga novels. We will also send out traditional culture and fields of interest to you at any time! Thank you.

Photo 晩春初夏「列車」

ガタン…ゴトン…ガタン…プシュー……

お荷物のお忘れ物や駆け込み乗車にご注意ください。えー、お荷物のお忘れ物や駆け込み乗車にご注意ください…

 

 この春私たちは卒業した

 この街をでていく

 次の場所へむかう

 故郷への気持ちを胸に

 

 プラットホームに立つ

 ああ、空が青い

 桜は満開の花びらを絨毯にして

 すでに葉桜となっている

 

プシュー…

列車が到着する

 

 故郷はここ

 次の場所への旅

 私たちは出発する

 哀しいけど必要な別れ

 

 その思いを断ち切るように

 私は列車のステップを踏む

 足取りは軽く

 元気に

 

列車は出発する

前の駅から次の駅へ…そしてその先へ

 

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ガタン…ゴトン

 ガタン…ゴトン

 

 列車に揺れる車内のなか

 乗り込んだ私は

 席に着く

 揺れに身を任せ

 

 外の景色はすでに初夏

 新緑の眩しい光

 時は正午ちょうど時計の針は

 12時をさしている

 

 その緑のなかを

 風を巻き起こしながら

 列車は進む

 前へ前へ…

 

 何分経っただろうか

 私は寝ていたようだった

 気配を感じ目を覚ました私の

 傍には車掌さんが立っていた

 

「あなた、ようこさんですね。話は聞いています。新たな門出のようですね」

にこっと笑い私に笑いかける

 

 え?

 私の名前を知っている?

 

車掌は続ける

「前の駅もあれば後ろの駅もある。あなたの列車も。全ての列車も。だから目をしっかりと開けて前を向きましょう。何を言っているという顔ですね。わたしはあなたのこともこの駅のことも、なんでも知っているんですよ」

車掌さんは、語り続ける。

 

 あのー…

 貴方は?

 私のことを知っているのはわかりました

 貴方は誰ですか

 

私はただの車掌ですよ

この駅のね

車掌の須屋 䑓は言う

微笑みをより深くして