Photo 晩春初夏「列車」
ガタン…ゴトン…ガタン…プシュー……
お荷物のお忘れ物や駆け込み乗車にご注意ください。えー、お荷物のお忘れ物や駆け込み乗車にご注意ください…
この春私たちは卒業した
この街をでていく
次の場所へむかう
故郷への気持ちを胸に
プラットホームに立つ
ああ、空が青い
桜は満開の花びらを絨毯にして
すでに葉桜となっている
プシュー…
列車が到着する
故郷はここ
次の場所への旅
私たちは出発する
哀しいけど必要な別れ
その思いを断ち切るように
私は列車のステップを踏む
足取りは軽く
元気に
列車は出発する
前の駅から次の駅へ…そしてその先へ
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ガタン…ゴトン
ガタン…ゴトン
列車に揺れる車内のなか
乗り込んだ私は
席に着く
揺れに身を任せ
外の景色はすでに初夏
新緑の眩しい光
時は正午ちょうど時計の針は
12時をさしている
その緑のなかを
風を巻き起こしながら
列車は進む
前へ前へ…
何分経っただろうか
私は寝ていたようだった
気配を感じ目を覚ました私の
傍には車掌さんが立っていた
「あなた、ようこさんですね。話は聞いています。新たな門出のようですね」
にこっと笑い私に笑いかける
え?
私の名前を知っている?
車掌は続ける
「前の駅もあれば後ろの駅もある。あなたの列車も。全ての列車も。だから目をしっかりと開けて前を向きましょう。何を言っているという顔ですね。わたしはあなたのこともこの駅のことも、なんでも知っているんですよ」
車掌さんは、語り続ける。
あのー…
貴方は?
私のことを知っているのはわかりました
貴方は誰ですか
私はただの車掌ですよ
この駅のね
車掌の須屋 䑓は言う
微笑みをより深くして