【創作小説】一瞬の花火(2)
いつも何かが起こる時
それは花火みたいだ
キラキラしゅわしゅわ
シャンパンのなかの金色に輝く泡みたいに儚く脆い夢みたいな現実
いつも思う
私はいつもここからは消えてなくならない
でも
わたしは今ここにはいない
そんな現実
_____________
ふっ
と我に返る。
と、
そこは、新たな門出を祝うかのように和やかな教室だった。
さっき、自分が自分ではないような感覚
今そこに、今ここに、居るはずなのに。
さっき、私はそこにはいなかった
ゾッとした。
そんな相反する感覚に包まれ
今の私の見ている世界は、いつまでも綺麗で本当の現実はどちらが夢なのか、幻なのか、わからない。
そう思うが早いか、その人が現れるが早いか。座った席からあげた私の目にそれは飛び込んできた。
思わず息をのむ
ヒュ__。
そこには私が今まで見た人の中で、いや、私が想像できる人のなかで、とろける様な眼差しをみなが向けるこの世のものとは思えない美しい人がいた。
あ__。
目と目が合う。
その人と私は数秒間の視線を交わした後、両方とも目を離す。
ドキドキドキドキ
さっきとは違うドキドキが私を襲う。
ドキドキ
こんなに美しい人には、人を石に変える力があるという。そんな迷信だと思っていたけど、本当にそうだ。
わたしはまるで、周りの空気まで固められ石膏のように固まった。
みな口々にそろえ、ため息と感嘆符。
『なんて美しいひとだろう』
そう言っているかのように。
私も思う。
なんて美しいのだろうと。
でもそれだけではなく潤いと儚さと輝きをも、持ち合わせていると私は思う。
ほう、とため息をつき
見つめる。
その人は優しく微笑んだ。
ふふと聞こえるか聞こえないか、そんな微笑。
滲み出る輝き。
しかし、太陽の輝きではなく
そう、月や星の輝きに近い。
あれは、いくつの晩もかけてふいごで焚かれて溶けだした砂鉄の成れの果て。
いや、鋼。
玉鋼。
鈍く鋭い光を宿したあの妖刀のような輝き。その光に魅せられたかのような私たちはその人の虜だった。