【創作小説】あてもない旅〜プロローグ〜
「きみはなぜここ存在しているのか。
それを知りたいと思ったことはあるかね。」
夢の中でこう聞かれた気がする。
私はいったい何の夢を見ていたのだろうか。
長いながい線路が続く。汽車の旅。
ガタゴトとゆれる中ぼんやりとしていた。
トンネルをこえたそのさきにはなにがあるだろうか。
そんなことを想いながら。
私は、潮さい高校の二年生だ。
潮さいとはいっても、まったく潮の香りも波の音もしない小高い丘の上にある高校に通っている。
成績は可もなく不可もなくだけど、一年生のころは皆勤賞をもらうくらいまじめな高校生。
でも私には人に言えないひみつがあった。
夢の中で、旅をする力。
現実にはない街々。
中世のヨーロッパ。
近世の日本。
いろんなところへいける力。
でも一つ
私には分からないことがあった。
夢の中のそのなかの旅にはいつもおなじ時間に同じ人物が現れる。
その人が誰なのかまったく分からないのだ。
その人物は、まるで、私の事を何度も見て知っているかのような・・・そんな感覚。
でも、私にはわからない。
どこの街、国、時代へ行っても私には以前の、そのまた前の夢の中の旅を覚えていない。
ただ、確かにその人は現れるのだった。