【小説】烏は主を選ばない(あらすじ・感想)阿部智里
阿部智里『八咫烏』シリーズ第2弾ここに開幕!!!!
朝廷の政争
そこにまつわる様々な憶測
全てお見通しだ!!
※ネタバレ等が含まれますので注意して先に進んでください
p365-368 大矢博子さんの解説からのあらすじ引用①
舞台は山上様によって開かれたと伝えられる世界「山内」だ。山内を統べるのは宗家、その長は金烏と呼ばれる。その下で東西南北四家の有力貴族がそれぞれの領地を治めている。
この世界に住むのは八咫烏たち。通常は人の姿で暮らすが卵で生まれ烏の形に転身して空を飛ぶこともできる。つまり、本シリーズの登場人物(烏物?)は、人の形をとってはいるが八咫烏なのだ。
それだけみればこてこてのファンタジーだが、舞台設定は日本の中世に近い。朝廷があり、貴族や豪族の身分制度があり、女性は政治の道具に使われる。服装は私たちが知っている日本の着物とほぼ同じ形式のようだし、移動は徒歩か、でなければ馬(という名前の烏)。式の存在や月日の概念も、桜などの食性も共通だ。武器は刀か弓矢。さらに言えば、同も我々と同じ文字も使っているらしいし(第一作に「あせびは馬が酔う木と書く」というくだりがある)、ちょっと先走るが第三作を読めば長さのtんいh尺、時間の単位は刻が使われていることがわかる。
烏に転身できる、ということ以外は、まるで平安王朝サスペンスを読んでいる気分で、すんなり物語に入れるのが。広く受け入れられた理由の一つだろう(今、さらりと書いているが、この設定は実は第三作以降で意味が出てくることなんじゃないかなーという気がするので覚えておいてくださいね)。
さて、本書『烏は主を選ばない』は、『烏に単は似合わない』に続く山内を舞台にしたシリーズ第二作である。
前作は次の金烏となる若宮のお后候補の姫たちが、東西南北の四家から盗電するという物語だった。華やかな女のバトル。お后決めは姫たちによる代理政争であり、恋愛小説であり成長小説であり、そして何よりあっと驚くミステリでもあった。
レベルを維持して書き続けっれるかという不安。第一作に対する、若宮の描写欠如という不満。
この不安と不満を『烏は主を選ばない』は一瞬にして跡形もなく吹き飛ばしたのである。驚いた。唸った。
p368-370 大矢博子さんの解説からのあらすじ引用②(本篇編)
本書は北の領地、垂氷の郷長の次男、雪哉が主人公だ。まだ元服前の少年である。学問は弟に追い抜かれるし、剣の腕は一瞬で降参するしのぼんくら次男として有名で、周囲は幸也の先行きを危ぶんでいた。「武家の子というに、情けないのう。お主には、野心というものはないのか」と問われ「塵ほどもありませんね」と即答してしまうような少年なのである。ところがひょんなことから、このぼんくら雪哉が、中央で若宮様のそば仕えになることに。
一般の少年なら大出世であるその役目も、雪哉は嫌で嫌で仕方ない。ところが出仕してびっくり。若宮はうわさ以上の奇矯な人物だったのだ。自分勝手だししきたりは破るし、花街や賭場へも出入りしているらしい。この若宮、うつけと評判なのである。
と、紹介を読んだだけでも間の良い人は気づくだろうし、本編を読み始めればすぐにわかることなので書いてしまおう。
古来、物語において、織田信長の例を引くまでもなく、うつけと呼ばれる人物が本当にうつけだった例しはない。中村主水の話を出すまでもなく、ぼんくらと評される人物が心からぼんくらだったなんてこともない。
というわけで、実はぜんぜんぼんくらじゃない雪哉と実は全くうつけじゃない若宮の、抱腹絶倒の掛け合いがまずは本書の魅力だ。次の金烏、つまりは皇子に向かって田舎貴族の次男坊が「馬鹿か、あんた」と突っ込むのである。何度吹き出したことか。
この雪哉がもうべらぼうに可愛い。賢いし気転は利くし、くるくるよく動くし。そんな雪哉をサドっ気たっぷりに追い込む若宮(もちろん意味はある)もまた、よんでいてにやにやしてしまう。いやもう、萌えるわー。
しかし、もちろんその裏では権謀術数が渦巻いているのだ。。若宮が后選びに一度も足を向けなかった最大の理由。それはお家騒動真っただ中にいたからなのである。若宮の兄を次の金烏に推す強力な派閥があり、その中でも過激派は若宮の命を狙っていた。若宮のそばにいるのは雪哉と、もうひとり、若宮の幼馴染で武に長けた澄尾だけ。こんな状態で自らの命を守り、敵対派と対峙していたのだ。
裏切り者は誰か。情報はどこから漏れているのか。信頼できるのは誰なのか。そのサスペンスたるや、そして驚愕の真相たるや、まさに巻を惜しく能わずである。
と同時にこれは「忠誠とは何か」の物語であることにも気づかれたい。兄を押す一派には、兄に心からの忠誠を尽くすものもいる。そして、雪哉の忠誠心は、自らの故郷・垂氷とその家族にある。
忠誠心とはすなわち、相手の幸せを願う気持ちのことだ。では相手の幸せとは何なのか。
このテーマはお家騒動にとどまらない。たとえば親子。この幸せを願って親が叱ったり褒めたりしても、それが本当にこのためになっているかは別というような例は、あなたの周囲にも多々あるだろう。
雪哉はまだ子どもである。彼は自分なりに精一杯誰かのことを考え行動するが、周囲もまた雪哉のことを思っている。それが必ずしもイコールで結ばれにところが、問題。自分に求められることと、自分が求めることの齟齬。そのどちらが本当にに大切な人の為になるのかという迷い。これは雪哉が周囲の人を知ることで自分を見つめ直す成長物語であるのだ。
若宮と兄宮、雪哉とその兄弟という二組の兄弟のあり方にも注目されたい。『烏は主を選ばない』は、心から相手のことを大事に思う、そんな人々がそれぞれ最良と信じる道を選び、進む物語なのである。
--------↓以下ブログ作成者のつぶやき・驚き・山椒のき↓-------------------------------------------------------------------
朝廷では利用し利用されるのは至極当然
p299.4行目
多かれ少なかれ、利用し、利用されるのが宮中というもの。いっそ、それが分かっていた方がが付き合いやすかろうと路近は言い切った。
雪哉が位の高い出身?!
p333.3
「だって、君は、北家当主の孫ではないか」
*本作を読んでいる途中のメモ*
- 作者の力技が垣間見られる・・・急なストーリーの展開がある・・・急な場面展開がある・・・このことに目をつむればとても素晴らしい本なのでは
- 第一弾『烏に単は似合わない』と交差するストーリー
- 雪哉の表情豊かな発言や行動に微笑み
- p224.8行目 若宮のことばへの雪哉の感想
- 風景の描写や人物の描写が目に浮かぶような華やかさ
- んあにこれ!!こんな展開ありですか?!!
- まさかの内通者は兄上??
- そういうことか